» はじめに
私たちが住む地球は,巨大な岩石として考えることができます.岩石は,様々な種類の鉱物が集まって構成されています. 従って,地球や惑星を構成する物質を研究する際には,岩石を構成する鉱物を最小構成単位として取り扱って,それら鉱物の物理的および化学的な諸性質を理解することにより,地球の歴史や内部構造について明らかにすることが可能となります. さらに,地球外から飛来する隕石を構成する鉱物を研究することにより,他の惑星に関する情報を知ることも可能になります.
一方,私たちは日常生活においても,色々なところで鉱物と密接に関係しています.美しさ,希少性,耐久性の三点に優れた鉱物は,特に宝石(ダイアモンドやルビーなど)として珍重されています. クオーツ時計は,石英(和名)と呼ばれる鉱物の名前(英名:quartz)が用いられているように,石英の持つ特徴的な性質のひとつを利用して正確に時を刻ませています.石英は,別称である水晶として有名です.その他にも,例えば,歯磨き粉や化粧品,自動車の塗装などにも鉱物は使われていますし,日常生活で目にする金属やセラミックスなども元は鉱物です. さらに最近では,環境汚染や核のゴミに関連した問題について鉱物の性質を利用して,問題を解決しようとする試みがなされています.このように鉱物は,地球科学ばかりでなく,無機化学,固体物理学や環境科学といった研究分野とも密接に関係しています.そうした鉱物を研究する鉱物学は物質を研究する基礎的な学問分野といえます. 私たちの鉱物学分野では,人間の生活において,とても身近で,かつ必要不可欠な各種鉱物について,様々な角度から調査・研究を行うことにより,鉱物の成因や鉱物の持つ様々な諸性質等について明らかにしてきています. 現在は,特殊条件下(高温や高圧)における鉱物の結晶構造に関する研究を単結晶X線回折法や赤外吸収スペクトル法を用いて進めています.また「中性子地球科学」の学術プロジェクト(2008-2013)の中で結晶学に関する知識を活かして参加しています.