現在から未来へ

現在から未来へ
現在の生物活動に引き継がれた「太古」の生物活動
現在の地球上に生きている微生物にも太古の昔の微生物の情報が含まれている。ここでは「生き方」を問題にする。生命の起源に近い微生物は高温環境で生きていたとする説がある。現在の陸上の温泉や海底の温泉では50〜100℃のお湯の中に微生物が生きている。それら微生物はお湯の中の成分を使って生きている。死後には炭素質の物質や鉱物を残していく。そうした鉱物などを丹念に調べると、高温環境で生きていた微生物の「生き方」や太古の時代の微生物との「つながり」も見えてくる。東北大学では実際に海底や陸上の温泉に出かけ、そこでの微生物と鉱物や温泉水との関係に関する研究も行っている。
またかつての日本海の海底で起こった熱水活動に伴って「黒鉱鉱床」が形成された。黒鉱鉱床は、秋田県北部に多く出現し、銅、鉛、亜鉛などを産出した。ここでは、かつての日本海の底が陸に成った様子が観察できる。人間活動に対する「金属資源」としての研究対象はもちろんのこと、鉱床にはかつての微生物活動なども残されている。そこにも太古の時代の微生物の「生き方」や微生物が生きていた「環境」の情報が隠されている。秋田県北部地域も東北大学の重要な研究対象である。
未来を考える
以上の紹介してきた課題は「地球と生命」がいかにつきあってきたかの歴史を解明する研究である。地球と生命を強く結びつけているのは炭素である。生命発生後、地球の中の炭素の流れは大きく変わったはずである。生物の進化とともにもに炭素の流れも変化してきたはずである。そこには規則や法則が存在しているはずである。その規則や法則が理解できれば、将来どうなるか考える事ができる。まさに温故知新である。将来の「地球と生命」を展望するときに欠かせないのが「人間」というファクターである。人間活動が炭素の流れ(二酸化炭素の排出)を変えてきているからである。過去の地球が経験してきた環境変動と、それに対する生物圏の対応、そして人間活動全てを理解して「地球の将来像」が描ける。我々の研究は地球の将来を担う重要な研究でもある。
フィールドワークの多くは「鉱山」で行われている。特に「最初の生命」と「鉱山」形成との関係は密接で、間接的ではあるが我々の研究は資源探査・開発にも結びつく。