生命環境の進化

生命環境の進化
生物活動の痕跡
「地球上にいつ最初の生命が発生したか」については,はっきりとは分からないが,少なくとも38億年前には海洋に微生物が活動していたという証拠が存在する。特にグリーンランドのイスア地域にみられる地層には38億年前の生物由来の炭素が見受けられる。しかし,そうした地質学的証拠も限定的な証拠であり,古い地層からさらなる生命の痕跡を探す仕事が求められている。不幸にして、日本には古い時代の地層は存在せず、研究しようと思ったら外国に行かなければならない。東北大学ではグリーンランドのイスアや、南アフリカのバーバートンなどで38億年前から32億年前にかけての地層の調査を行っている。我が研究室ではグリーンランドで地質調査を行い、最古の生命の痕跡を発見した。
地球環境を変えていった生物
生命誕生後、生物はゆっくりと時間をかけて進化していった。最初の生物が何をエネルギー源にしていたか、分かっていない。しかしある時期から生物は太陽の光をエネルギーとして使う事を覚えた。「光合成」である。光合成には幾つかのタイプがあるが、植物が行うような「酸素を作る光合成」が一般的であろう。「酸素を作る光合成」がはじまる前までは、地球は無酸素状態だった。地球の歴史のある時期に、「酸素を作る光合成」をする微生物が発生し、まず海の表層を酸化し、それから大気に酸素を放出したらしい。問題は「いつ?」である。我々は30億年よりも前に「酸素を作る光合成」をする微生物が発生したとする仮説をたてている。いつから酸素を作る光合成が始まったのか、という課題に東北大学では果敢に挑んでカナダのスティープロック地域を中心に調査を行ってきている。
「光合成」が活発に行われると大気の中から二酸化炭素を取り除いてしまう。それが極端に行われると、地球は寒冷化し氷河時代に突入する。地球の歴史の中では、地球全体が凍り付いてしまうような大規模氷河活動が数回あったとされている。この現象は全球凍結(スノーボールアース)と呼ばれている。23億年くらい前に全球凍結があったらしい。生物圏をとりまく環境が全球凍結前後で激変し新しい進化をうながしたらしい。これは環境変化に生物がいかに対応するか(対応できず滅びるか、変化を選び生き残るか)という問題に結びつく。「光合成」「環境変動」「炭素」をキーワードに先カンブリア時代の生物環境の変化に関する研究を行っている。
News
2013年12月8日付け、Nature Geoscienceにグリーンランドのイスア地域の研究成果が公表されました。
http://www.nature.com/ngeo/journal/vaop/ncurrent/index.html
NHKスペシャル「地球大進化」にもグリーンランドの研究が紹介されています。
科学雑誌「Newton」にも研究が紹介されました。