科学研究費補助金 特別推進研究
代表者 東北大学・理学研究科・教授 大谷 栄治
1. 研究機関内に何をどこまで明らかにしようとするのか
本特別推進研究「地球惑星中心領域の超高圧物質科学」では、地球核、核マントル境界、マントル深部の構成(図1)の3つの課題を解明することによって、地球中心領域の物質科学モデル確立することを目的とする
第1に、地球核の温度圧力を実現し、圧力スケールを確立する。最も信頼できるスケールは、密度と音速の同時測定によるものである。本研究では、この方法で核の構成を解明するため、MgOやNaCl-B2相などのマルチメガバールに及ぶ圧力スケールを確立する。さらに、300GPaで3000Kを超える地球の内核の条件を実現し、そこでのX線その場観察を可能にする。
第2に、信頼できる温度圧力のもとでX線粉末解析とともに、新たに高温高圧X線メスバウア分光法、高温高圧顕微ラマン分光法を併用して、スピン転移、磁気転移、構造相転移など地球・惑星中心部の相転移現象を明らかにする。
第3に、X線非弾性散乱法とブリルアン散乱法の2つの方法を併用して核・下部マントルに及び条件で金属鉄合金相、下部マントル鉱物の弾性波速度を測定し、従来の密度の情報に加えて地震波速度を制約する地球中心部の物質モデルを創出する。
2. 当該分野におけるこの研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
本研究は、新たな計測技術を開発し導入する点、すなわち、@海外に例のない核アナライザ―を用いたエネルギードメイン放射光メスバウア分光法(NAED-MS法)を用いたメスバウア分光システムを開発・導入して、高温高圧X線メスバウア法を確立する点、A地球内部の一時情報のモデル化に不可欠な弾性波速度を核、核マントル境界、下部マントルAついて、X線非弾性散乱法とブリルアン散乱法の両社を活用して解明する点は独創的である。さらに、B超高圧Aおいて超高温を実現するために、レーザー衝撃法研究者と共同でパルス加熱による超高温発生と計測、そこでのX線回折に挑戦する点にも大きな特色がある。
特にX線非弾性散乱法およびブリルアン散乱法では、すでに世界最高圧力での音速の測定に成功している。この研究によって、地球中心部の構成、密度、音速を同時に決定し、従来行われていた密度に加えて、最も親鸞できる物理量である地震波速度のモデル(図2)を説明する地球中心域の物質科学モデルを提出することが可能となる。
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