平成18年度の研究計画
(1) すでに達成している核マントル境界の条件、140GPa 2000-4000Kを条件で金属鉄と下部マントル鉱物(ペロブスカイト相、ポストペロブスカイト相、ホーランダイト相など)の反応様式を解明し、核・マントル間の相互作用に適用する。(大谷、近藤)さらに、Fe-H2O反応、すでに核マントル境界で安定であることを解明したAlOOHの新高圧相と鉄の反応を解明する。(大谷、近藤)さらにFe-S-O系の融体とケイ酸塩融体の反応を明らかにする。特に、O、Siの金属鉄への溶解度とともに、熱源となる元素であるK、U、Thの分配関係を解明する。加熱実験には、東北大に既存のYAGレーザーとともに、新たに本機関に導入するYLFレーザーを使用する(近藤、寺崎)(宮原、大谷)高温高圧で回収した試料を分析電子顕微鏡(東北大学設置、専用および共用)を用いて元素分析を行う。(宮原、大谷)。
(2) 300GPa, 1000 K以上の高温の発生を実現する。この技術を用いて、核内部の条件において、鉄・ニッケル合金、鉄・軽元素(FeNi, FeO, Fe3S, Fe3Si, Fe3Cなど)系の高圧相転移と圧縮特性を解明する。実験には、PF及びSP8の放射光の強力X線源を使用する。また、圧縮曲線は、圧媒体としてヘリウムを用いるか、各圧力でレーザーを用いて加熱し、アニールすることによって、応力による歪を除去し、正確な圧縮曲線を決定する。加熱実験には、東北大に既存のYAGレーザーとともに、新たに導入するYLFレーザーを使用する(近藤、寺崎)
(3) マルチメガバール領域では、高温とともに室温でさえも圧力スケールが未確立である。200GPaでの常温、高温での圧力を確立するために、圧力標準の状態方程式を確立する。特に、圧力標準物質として、白金、金、MgOの同時圧縮実験を行い、上記の実験の圧力標準として適用可能な状態方程式を200GPa, 1000Kまでの条件で確立する。(大谷、鈴木)
(4) SP8およびPF設置のマルチアンビル高圧装置を用いて、外核を構成すると考えられる鉄・軽元素系(S, C, Siなど)液体の密度および粘性を吸収法および落球映像法を用いて測定する。金属液体の密度・粘性測定は、これまで行われている世界最高圧力である25GPaまでの条件で行う。(鈴木、寺崎)
平成19年度の研究計画
(1) 高温高圧発生技術をさらに改良し、内核の圧力条件を目指す。(大谷・近藤)
(2) 前年度行ったFe3S, Fe3Si,などの圧縮実験について、ダイヤモンドアンビルを用いて核の条件まで圧力を拡張する。圧縮には、応力による歪を解消するために、レーザー加熱を行いアニールする。高温高圧で格子体積を精密に測定し、状態方程式を確立する。この圧縮実験の結果を内核の密度と比較し、内核に軽元素が存在する可能性を検証する。(大谷、近藤)
(3) 内核に観察される地震波速度の異方性の起源を解明するために、高温高圧実験によって内核物質の構造を決定する。また、同様の構造を持つ内核のモデル物質について、変形特性の解明、応力場での選択配向の解明のための実験に着手する。本年度導入する超高圧変形試験機金型および超高圧変形試験機油圧制御装置は、内核のモデル物質の変形試験に使用する。(鈴木、大谷)
(4) 核マントル境界起源と考えられているPlume起源の玄武岩マグマの186Os同位体の異常の原因を解明するために,ダイヤモンドアンビルを用いて核の条件で加熱し、Fe-FeS系などの鉄・軽元素系の部分融解実験を行い、回収試料のRe, OsとPtの濃度を分析電子顕微鏡で測定し、金属鉄と鉄軽元素融体とのOsとPt元素分配の違いを明らかにする。(大谷、宮原)。外核物質は、内核の結晶化にともなうPtとOs元素分配の違いによって、Os同位体に異常が生じるものと予想されているが、この仮説を検証するのが本研究の目的である。
(5) 前年度に引き続きSP8およびPFにおいてマルチアンビルを用いて、外核を構成すると考えられる鉄―軽元素系(S,C,Siなど)液体の粘性および密度を測定する。粘性・密度の測定には、X線透過性に優れたBNおよびダイヤモンド多結晶焼結体を用い、これまで行われている最高圧力である25GPa以上の条件実験を行う。(鈴木、寺崎)