科学研究費補助金 基盤S課題 地球中心核の構成と進化

平成18年度の研究成果

(1) 金属鉄と水(H2O)の反応を84GPaまで明らかにした。その結果、10GPaを超える高圧下、で1000K以上の高温で、金属鉄と水が反応し、鉄水素化物と酸化鉄が生成することが実験的に明らかにした。この反応は、地球の集積時の初期地球内部で生じていた可能性がある。この反応によって、コアの軽元素として水素が鉄に溶解することが明らかになった。

(2) 核内部の条件において、鉄・ニッケル合金、鉄・軽元素(FeNi, Fe3S, Fe3Si, FeNiSiなど)系の高圧相転移と圧縮特性を解明する実験を行った。実験結果は解析中である。

(3) マルチアンビルによる実験においては、圧力約30GPaのもとで約3000までの条件でMgSiO3ペロブスカイトと金属鉄との反応を明らかにした。そして、MgSiO3ペロブスカイトと金属鉄が反応しマグネシオブスタイトが生じ金属鉄メルト中にSiOが溶解する反応を確認した。この反応は大きな圧力・温度依存性があり、酸素分圧一定のもとでは高温で多くのSiOを溶解する。また、圧力の増加ととともにSiOの溶解量が増加する。この結果から、断熱的な温度プロファイルに従う核の分離に伴って、鉄中へのSiOの溶解が進むことが明らかになった。

(4) 140GPa 2000-4000Kを条件で金属鉄と下部マントル鉱物(ペロブスカイト相、ポストペロブスカイト相、ホーランダイト相など)の反応様式を解明した。

(5) SP8およびPF設置のマルチアンビル高圧装置を用いて、外核を構成すると考えられる鉄・軽元素系(S, C, Siなど)液体の密度および粘性を吸収法および落球映像法を用いて測定を行った。

平成19年度の研究成果

今年度は、核マントル境界の反応、外核の金属鉄メルトの物性、内核の結晶構造と地震波異方性についての研究が進展した。具体的には以下のような成果が得られた。

   (1) 金属鉄と高圧で安定な含水相AlOOH相との反応を明らかにした.
    60GPa以上の圧力では、1300K以上でFeHが生成し、含水相は不安定化すること
  が明らかになった.

(2)  試料の安定な過熱のために、加熱領域を絞ることができるファイバーレーザーシステムを導入し、100GPa以上でも効果的に加熱できるようになった。

(3)   内核の条件に近い256GPa3600Kにおいて、高温高圧実験を可能にし、Fe-Si系の高圧相としてhcp相が安定であることを明らかにし、内核の異方性がhcpFeSi相の選択配向である可能性を示した。

(4)    外核の性質を解明するために、Fe-Sメルトの密度の組成依存性を4 GPaの条件で明らかにした.測定には浮沈法とともに放射光を用いたX線ラジオグラフィ法を使用した.

(5)    1.5 GPaのもとでFe-S Fe-P系のメルトの界面張力の測定に世界で始めて成功した.


トピックス:本基盤研究で新たに明らかになった知見

・圧力発生の履歴

・核マントル境界条件135 GPa, 3500 Kの発生に成功、そこでの鉄とケイ酸塩の反応過程の再現に成功 (Sakai et al., 2006; Hirao et al., 2006)

・核内部の条件240 GPa, 3500 K; 257 GPa, 2400 Kの再現に成功、内核物質の安定相を解明 (Asanuma et al., 2008) (図はFe-Si合金の相図)



地球中心を越える圧力375 GPa, 700 Kの発生と内核物質の圧縮実験に成功 (Asanuma et al., 2008 in preparation)(図はhcp-FeNiSiの圧縮曲線)